2012年4月28日土曜日

北海道大学低温科学研究所 相転移ダイナミクス分野


1. 雪の結晶:その形が千変万化する理由

氷の結晶成長機構及び成長に伴うパターン形成機構の研究

雪の結晶は、その精緻な構造と整った六回対称性から自然の作り出す 最も美しい結晶です。結晶のパターンは、結晶が成長するときの温度と過飽和度によって千差万別に変化することが古くから知られています(Fig.1)。


Fig.1:温度と過飽和度による結晶パターン変化

また、過冷却水中で成長する氷の結晶も雪の結晶と同様 に美しい樹枝状パターンを作ります。このような結晶パターンの変化は、どのような仕組みで起こるのでしょうか?

これを理解するには、 結晶の成長機構を解明することが必要です。私たちの研究グループでは、実験、計算機シミュレーション、さらに理論モデルなどのさまざまな方法でこの問題の研究を行っています。

雪結晶のパターン変化の特徴は、温度による晶癖変化過飽和度による安定成長から不安定成長への変化に大きく分けられます(Fig.2)。


Fig.2:雪の結晶の成長の型


水は海面で何華氏でフリーズ

このなかで、晶癖変化は氷結晶の表面融解現象と密接に関連することが明らかになっています。すなわち、氷結晶の底面(ベーサル面)と 柱面(プリズム面)では、表面融解の温度特性が異なる(異方性と言う) ために両方の面での結晶成長速度の大小関係が温度により逆転するためと理解されています(Fig.3)。


Fig.3:表面構造変化と晶癖変化

また、安定から不安定成長へ移行する形態不安定の問題は、いくつかのモデル(Fig.4)が提案されていますが、未だ多くの興味深い問題が残されています。


Fig.4:安定成長から不安定成長→形態不安定性

一方、過冷却水から成長する氷結晶のパターン形成は、成長初期には円盤状であるがやがて円盤の縁で形態不安定が発生し、最終的に六回対称 の発達した樹枝状となります。最近では、無重力環境を利用して対流のない静かな環境での氷結晶の自由成長実験を行っています。


クロンダイク、経済不況

また、一方向凝固法によって、不純物をわずかに含む水からの氷の結晶 成長実験も実施しています。これは、氷結晶の成長に伴う不純物の排斥 による界面での拡散場の発達や、界面への不純物分子への吸着が界面 パターンにどのような効果を持つかを解明する上で極めて有力な実験 手法です。これまで、界面形態不安定の発達が従来の理論的予測と異なることや、界面前方での組成的過冷却の発生を直接観察するなどの大きな成果を挙げています。

結晶成長に伴うパターン発展の問題は、非線形・非平衡環境における パターン形成の最も典型的な例です。このような現象の起こる仕組み を解明するには、実験や理論が独立に議論するよりも、両者をどのよう に融合させるのかが今後の研究発展のキーポイントです。

大雪山中にて撮影された天然雪結晶

雪結晶のパターン変化の特徴
・温度→表面構造→晶癖変化
・過飽和度→形態不安定性 


魚の国内です

2. 氷の結晶:成長しているのに融ける表面融解とは

氷結晶の表面及び界面での構造相転移の研究

結晶の表面は、融点に近い温度領域になると薄い液体層で覆われた方が 安定になることが知られています。このような現象は表面融解(Fig.5)と呼ばれるもので、結晶表面の構造相転移の一種と考えられています。


Fig.5:融点近傍での結晶表面の構造相転移

氷結晶の場合は、 結晶の表面、結晶と他の物質との界面、さらに氷結晶同士の界面(結晶粒界) において同様な現象が起こるため、これが氷結晶のさまざまな物性的特徴と 結びついています。雪の結晶の形態変化、雷の発生、凍上現象、スケート、 酸性雪の生成、復氷、焼結、など雪や氷に関するさまざまな現象がこのような構造相転移と関連して議論されています。

我々の研究グループでは、偏光解析法(Fig.6)、X線回折、NMRなどの実験手法、分子動力学法などの計算機シミュレーションを駆使して氷結晶表面の分子 レベルでの解析を行っています。その結果、氷結晶表面の融解層の厚みや物理特性の温度依存性、面方位依存性(Fig.7)が明らかになっています。このような基礎研究を基に、さまざまな雪氷現象のメカニズムの解明を目指してい ます。



Fig.6:偏光解析法


Fig.7:擬似液体層の厚さ

一方、氷/水界面の構造や結晶成長カイネティクスについては、従来ほとんど研究が進んでいないといっても過言ではありません。これは、氷と水の界面のような固液界面の構造や成長過程を直接観察する手段に乏しい ことが一因と考えられます。

私たちは、分子動力学法により氷結晶の成長 過程の分子レベルでの観察に成功し、氷のベーサル面とプリズム面では界面の構造のみならず、成長カイネティクスが全く異なることを明らかにしました。これにより、氷結晶の成長形が円盤状になるという観察事実をうまく説明することができます。

氷結晶表面の計算機シミュレィション



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